◇ ですから、この世の中の夫婦の関係ほど、不思議で微妙なものはないといえましょう。
◇ 本来、夫婦になれば、一つ屋根の下で他人同士の男女が、「布団は一つ、枕は二つ」ということで仲むつまじく一緒に暮らすことになるわけですから、宿世の縁としか言いようがありません。それなのに、いつも夫婦喧嘩が絶えない夫婦というのは、なんとも悲しいことではないでしょうか。この世の中のたった一人の妻さえ大切にできない夫がどうして世の中の役に立ちましょう。また、この世の中のたった一人の夫さえ優しく接することのできない妻がどうして幸せになることができましょうや。
◇ 人間は感情の動物であり、誰にでも好き嫌いの思いはありますが、好きな人と結婚できる人、さほどでもないのに、結果的に結婚してしまう人、これ、ともに宿世の縁であります。
◇ しかし、燃えるような恋愛をした結果、やっと結ばれたというのに、結婚生活はいつしか潰えてしまったり、あるいは、最初からそれほど好きでもない相手と一緒になって夫婦げんかも絶えないのに、一生縁が続いたという夫婦は枚挙にいとまがなく、縁とはまことに摩訶不思議なものです。
◇ 良かれ悪しかれ、一本の赤い人で結ばれること自体、ただごとではありません。
◇ このただごとでないことを十分理解された上で、より夫婦の絆(きずな)を深めるところに人間の価値はあるのではないでしょうか。
◇ それなのに一時の感情のおもむくまま、せっかくの生活の土台を根本から崩すのは、これほどやりきれないことはありません。無理に別れ、互いの胸に、生涯癒しきれないキズを与え、悪くすると、来世にもつながりかねない恨みを抱きながらの、その後の生活は、よほどの幸運に恵まれた人でない限り、ウマクいくことは少ないと言えましょう。
◇ 近頃の風潮は、離婚が当たり前のようになっていますが、夫婦生活はお互いの精神を高めるための道場でありますので、夫婦げんかもあり、愛し合い労り合うこともあって、そのなかで、夫婦としてのあり方を学んでいくものです。
◇ そして、最後に、夫婦道を極め、死ぬ間際に夫婦としての免許皆伝が天から与えられ、「わたしは、あなたがいたからこそ夫婦生活を100倍楽しめたよ。ありがとう」といって、あの世に行きたいものですね。
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