2016年2月10日水曜日

男を快楽の海で泳がせるベッドテクニックとは

江戸時代、吉原といえば、日本最大の遊郭として知られていますが、そこには何百人もの遊女がいたそうです。彼女たちのなかには、むろん「床上手(とこじょうず)」が多かったはずです。「床上手」とは「性的技術に長けた女」という意味です。

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まあ、遊女である以上、床上手なのは当然でしょうが、実際のところ、彼女たちのテクニックとは、どんなものだったのでしょうか。

ここでは、井原西鶴の「好色一代男」に描かれた「野秋(のあき)」という遊女の技を紹介しましょう。


「好色一代男」の主人公・世之介(よのすけ)は、彼女のことを、次のように絶賛しています(『江戸の恋』田中優子・集英社新書より)。

肌がうるわしく温かく、その最中には鼻息高く、髪が乱れてもかまわないくらい夢中になるので、枕がいつの間にかはずれてしまうほどで、目は青みがかり、脇の下は汗ばみ、腰が畳を離れて宙に浮き、足の指はかがみ、それが、けっしてわざとらしくない。

さらに、たびたび声を上げながら、男がたっしようとするところを、九度も押さえつけ、どんな精力強靭な男でも、乱れに乱れてしまうところだ。



そのうえ、そのあとで灯をともしてみる、その美しさ。別れるときに、「さらばや」という、その落ち着いた優しい声。いったいあの声はどこから出てくるのだろう・・・。

この世之介の賛辞を整理すると、「床上手な女」とは、以下のような条件を兼ね備えた女性ということになるのだろうか。

★ 肌が美しく、温かい。
★ 性に没頭しつつも、体は敏感に反応。その乱れぶりが男を喜ばせる、みごとなパフォーマンスになっている。
★ 男をできるだけイカせないようにすることで、いつのまにか性の主導権を握っている。
★ 事後が美しい。
★ しつこくすがったりせず、さっぱりと「さようなら」が言える。

いかがでしょう。「床上手」とは、性の技術に長けた女という意味ではありますが、野秋のような女性を見ると、けっしてそれだけではないことがお分かりになるはずです。

たしかに、野秋のワザは、どこか計算づくのようにも思えますが、彼女たちが仕事として、好きでも嫌いでもないふつうの男たちと一夜をともにしなければならなかった以上、いつも夢中になれるはずもありません。だからといって、マグロのように床に寝ているだけでは、客は愛想を尽かします。

これは、したたかなプロ意識と、自分をコントロールする能力があってこそのワザ、いや人間性まで含めた「芸」といってもいいでしょう。おそらく、世之介も、野秋の性技だけでなく、そうした「芸」に拍手をしていたのではないでしょうか。

いつの時代も、惚れているかのように見せて、さらりと「さらばや」と言えるような女性に、男は翻弄されたいと思っているのです。



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